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「…なんとも。訳の分からん人だな。」
消えた影を見送った感覚を胸に置き、俺はまた先へ歩く。
吐き出す煙は、赤みを増したようで、まさしく紫煙。
このまま進んだら、「春」とやらが訪れるそうだが、いったいなんのことやら。
この世界がどこまで続くのかを考えながら、ゆっくりと先へ。
俺の前には、今までにはなかった、分岐路が現れた。
ちょうど、Yの字。
感覚的に、左側を行けばビル群。右へいけば、町中へ行くような感じだ。
しかしだ、生憎とそう簡単には行かない様子だ。
道は、その先を無くしている。
何もない。
モノ、人、町、色。
すべてが途切れた、何もない空間。
初めて知覚する、透明。何色とも言えない、透明。
先には何かがあるという、奇妙な確信。
「よぉ。相変わらず、惚けてんな。」
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