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「寒いな。」
吐き出した白いモノが、煙なのか息なのか。
俺はコートのポケットに手を入れ、肩を竦めながら歩いていた。
くわえた煙草は、まだ寿命が残されているみたいで、自らを燃やし続ける。
この道を歩き始めて、どれくらいだろうか。
振り向いてみる気も、もう萎えてしまった。
ふと、何故こんな事をし始めたのかを自問してしまった。
「酔狂な事だがね。」
声を出しても、何も返ってきはしない。
理由なんて、大したモノじゃあない。
良くある話だ。
高校まではグループの中心だった奴が、遠くの大学で孤立する、だの。
会社に貢献してきたのに、今じゃぁ窓際族だの。
長年つきあって、同棲していた恋人に突然別れを告げられた、だの。
まぁ、不幸話は、いくらでも思いつく。
君も、そうだろ?
道すがらの受験生らしき、に心中問いかける。
是も非も、ない。
まぁあたりまえか。
随分と命を削った煙草を大きく吸い込み、俺は海を眺めた。
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