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チャリン… ピッ …コトン。 なんとか、手持ちがなくなる前に相棒とも言える紙筒を買うことができた。 人心地ついた所で、近くにあった設置式灰皿の横でくしゃくしゃになったソフトケースから先ほど加えた煙草を取り出した。 かちっ かちっ かちっ いつぞや銀色のコインから交換したライターは、どうやらそのお役目を終えてしまったようだ。 「…っとに、ついてねぇ…。」 溜息混じりに呟いた独り言を中空に見送り、俺は傍にあったベンチへ腰を下ろした。 かちっ かちっ 中の液体が無くなり、ただのボタンと化した其れを、徒にもてあそんでいた時、聞き慣れぬ女性の声が自分へ向けられていることに気づいた。 「火、いります?」 「あぁ、助かるよ。ありがとう。」 隣のベンチに座っていた、スーツの女性。 どうやら一服にもありつけない哀れな男が目に付いてしまったんだろう。 彼女は、どうぞ、と微笑みながら、その容姿にはそぐわぬ無骨なZippoを差し出していた。 「こりゃまた、随分と…、趣味かい?」 独特のオイルの香りを含んだ煙を吸い込み、有難う、と彼女へライターを返した。 「やっぱりそう思います?よく言われるんですよね。」 はは、と苦笑を浮かべながら彼女は答えた。 「あんたみたいな人が持つような感じは、少なくともしないかな?」 「…んー。まぁ、確かに彼氏の趣味ではありますね。」 手作りなんですよ、と。そう付け加えた彼女は、少し陰のある表情を浮かべた。 「居なくなっちゃいましたけどね、刺されて死んじゃうようなろくでなしでした。」 言葉とは裏腹に隣に座る彼女の表情は、暖かな物だった。 「バンドと遊びばっかで、あんまりかまってもくれないような奴だったけど…って、なんでこんな話してんだろ。」 困った様な笑みを見せながら、彼女は俯き頭をかいた。 「ま、初対面だからこそ話せる事もあるだろうさ。」 チリチリと燃えていく煙草をくわえながら、たいぶ薄暗くなった空を見上げた。 一番星って奴を眺めながら、俺は彼女へ言葉をかけた。
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