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辺りはもう、だいぶ暗くなっていた。 「ねぇ、このライター、受け取ってくれない?」 突然、彼女は無骨な其れを差し出してきた。 「…私にはもう、必要ないみたいだし…でも捨てるのも…ね?」 「後味悪いってか、人に押しつけといて。」 言いながら、俺は“随分と見覚えのある”模様の刻まれたZippoを受け取った。 「もう、あんなろくでなしみたいなのじゃなくて、普通の幸せにしてくれる人を探すわ。」 「…幸せになって、笑って死ぬことにする。」 ファッキン・ブラザー、てめぇの尻拭いはしてやったぜ。偶然だけどな。 「あぁ、お幸せに。結婚式の唄は、地獄から届けてもらいな。」 握りしめた、兄のバンドのマークが刻まれたライターをポケットに突っ込み、片手をひらひらと、背中を向けながら振った。そのまま、夜のベンチから歩き始めた。 「全く、世間様ってのは、狭いもんだ。」 バイバイ、初めて見た元姉さん。 50年先でも60年先でも 勝手にベッドの上でくたばっちまいな。
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