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びゅうぅ、と冷たい風が吹き抜けた。
まるで置いてけぼりになった気分だ。
先程考えた自問は、どこかに消えてしまった。
理由なんかは、考えた所で仕方がないんだろう。
思いつかないだろうし、よしんば思いついたとしても、下らないだろうから。
「やぁ、こんな所で何をしてるんだい?」
やたら青白い彼女に語りかけた。
何の疑問も不信感も抱かなかった。
「あなたは?」
冷たい声。やたらと澄んだ声だ。
「散歩、かな。」
「そう。私は、待ってるの。」
「何をだい?」
「春。」
ああ、そうか。痛んでいるんだな、脳が。
「そうか。それならもう少し待つと良い。」
俺はそう告げて、その青白い彼女から去った。
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