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「また。」
背後から、抑揚のない声。
俺は新しい煙草に火をつけて、耳に届かなかったふりをした。
どうして彼女はあんな色だったのか。
ふと沸いた疑問を、煙に誤魔化した。
また、なにもなく歩く。視界には、白くぼやけた景色。
海からは、波の打つ音が響いてくる。
ざざぁぁぁん…ざざぁぁぁん…。
いつの間にか耳には、それだけが集まっていた。
道行く人の青白さと、白ずんだ景色の中で、俺は何も考えずにゆっくりと歩き続けていた。
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