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「君の携帯は……この部屋の鍵になった、よ」
「は……あ」
脈絡のない説明で曖昧な返事をするしかない俺に、補足するかのようユリアさんは言葉を続ける。
「このランプが赤く光ったら……施錠完了。 緑に光ったら、開鍵。鍵の仕方はボタンを押して携帯をこの機械に翳す……だけ」
「携帯で出来るんですか!?」
「だから鍵、って言ってる……じゃない」
俺の反応に呆れた顔をするユリアさん。
「ああ……そうでしたね。ハハハ」
俺からしたら説明不足だったユリアさんが悪いと思うのだけど……なんとなく居心地悪く感じ、渇いた笑いで場を取り繕う。
「君の携帯を鍵としてこの機械に登録したから……これで出入りは自由、だよ。エントランスは携帯翳すだけでロックが外れる……から」
ニッコリとこちらに笑顔を向けながら「これで女の子も呼べるね」と言うユリアさん。
――…なんだろう?
何故だかはわからないけれど……。
さっきも同じ事を言われたけれど。
言われた同じ言葉より、向けられたユリアさんの笑顔がちくりとした痛みを……俺の身体に残したんだ。
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