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ゴミ袋が、鈍い音をたてて落ちた。作業を始めてからどのくらい時間が経ったろう。腕時計を見てみると、一時間や二時間どころではなく、半日以上はこうしているということがわかって少々うんざりした。
全く困ったものだ、と私は嘆息した。たった一人で何時間も肉体労働を続けるというのは、身体的にも精神的にも負担がかかっていけない。
少しイラついたので、今捨てたばかりのゴミ袋を蹴ってみる。すると、袋越しに奇妙な感覚が伝わってきた。余計に気分が悪くなりそうだったので、物に当たるのはやめにした。
さて残りの作業は、と後ろを振り返ると、かすかに電話のコール音が鳴っていることに気がついた。電話の相手はわかっている。やれやれこんな時に、と私は疲れた体に鞭打って駆け出した。
鉄の扉を開けてゴミ捨て場から出ると、しばらく廊下を歩き、とある一室に入って受話器を取る。
「こちらも忙しいんでね。あまり頻繁に電話をかけるのは控えて頂きたいのですが」
極力平静を保って言葉を発したつもりだったが、やはりどうにも不機嫌そうな声になってしまったかもしれない。相手方は気を悪くしただろうか? まあ正直な話、あまり心象を悪くされても困る。何しろ、今の私の生活は、相手方の援助あってのものなのだ。いちいち相手のご機嫌を取らねばならないのも不本意だが、こんなつまらないことで関係が悪化したとなっては最悪だ。
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