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「ヒント?」
『そうでございます。契約破棄の権利を獲得した方にのみ、もれなく』
「ヒントというのも、抽象的な言い方ね。具体的には、どのようなものなのかしら」
『申し訳ありませんが、お教えするわけには参りません。ただし、ヒントを得た方が他の方にそれを伝える行為に関しては、お止めしませんが』
「なるほどね……」
茶天は、熟考するように腕組みをした。だが、彼女の唇はどこか苦々しげに歪んでおり、今の事柄について考えているというよりは、次なる質問を捻り出そうとしているようにも見える。
だがしかし、彼女の思考を遮るかのごとく、トリカブトはすぐさま話を続ける……というより、打ち切ろうとした。
『……さて、とりあえずのところ、説明は以上でございます。それでは皆様、よい寮生活を』
「ち、ちょっと待てよ!」
まだまだ、問い詰めたいことは山ほどある。こんなところで退散されても困るのだ。
しかし榎戸らが声をあげるも、もはやトリカブトは会話を続ける気はないようだ。
『もしわたくしに何か用事がありましたら、中央にございます絨毯の上にて、わたくしの名を呼んでくださいませ』
その言葉を最後にして。ブツッ……と低い音と共に、花の立体映像が消え失せた。
そして、あの不気味に落ち着きを払ったトリカブトの声も、聞こえなくなった。
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