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静寂が、その場を支配していた。誰もが一歩も動かず、ただ目だけを使って他人の様子を窺っている。いや逆に言えば、俺達は互いに牽制し合い、誰も動けずにいたのだ。
先ほどのトリカブトの話を踏まえると、この場での殺人が容認されたといっても過言ではない。
疑心暗鬼の渦。もしかすると、今にでも誰かが誰かを殺す計画を練り始めているかもしれない。
さすがに、たったあれだけの話で殺人を決意するような人間がいるとは思いたくないが、他人が何を考えているかなど、全くわからないのだ。
「いつまで……こうしてるつもリ?」
ふと、沈黙を破ったのは、ニーネだった。
「黙ってたって何も始まらないヨ。さっきの、トリカブトとかいう奴の言葉に惑わされちゃダメ。今は、皆が一致団結しなきゃいけない時なんだかラ」
「馬鹿馬鹿しいね」
だが、彼女の言葉を奈々尾が一蹴する。
「人間、これだけ人数が集まれば誰かがバカやらかすもんでしょ。さっきの話を本気にして、人殺しに走る奴が出てきたり……さ」
すると、榎戸が物凄い形相で彼女を睨み付けた。
「んなの、てめーが一番やりそうじゃねえか。キョーチョーセー、ってもんがない奴は、何をしでかすかわからねえからな!」
「はあ、あんたには協調性を説かれたくないんだけど。そんなナリで、集団に溶け込めるとでも思ってんの?」
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