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 ハサミの全長は、二メートル近い。サビ一つなくぎらぎらと銀色に鈍く輝いているが、それが逆にかなり不気味だ。 「苗代さん……!」  茶天が、驚いたように呟いた。 「どうして、ここに? 加納さん達はどうしたの」  この男が、苗代。  俺は、やや緊張して彼の姿を見つめ直した。  見た目で人を判断するつもりはないが、やはりこの男からは危険な雰囲気が感じ取れる。そもそも、あれほど巨大な凶器ハサミを持ち歩いているところからして、普通ではない。  苗代は、つまらなそうに口を開いた。 「加納って……ああ、あのガタイのいい兄ちゃんのことか。あいつなら今、あのデブのおっさんを介抱してるぜ」 「なんですって?」 「デブのおっさんを介抱してるっつったんだよ。あのおっさん、ちと脅かしてやっただけで、のびちまってよ」  どうやら、苗代の説得にあたっていたはずの加納は、今は気絶した安田を介抱しているらしい。  だが、『ちと脅かしただけ』というのは……? 「聞いたぜ。ここから出たけりゃ、人殺しをしなきゃならねえらしいな。ヒュウ、痺れるねえ」  ガシャ、と重い巨大ハサミを担ぎ直して、苗代は舌なめずりをする。  ……危険だ。  気がつけば、俺はまくしたてるように口を開いていた。 「な、何も人殺しを“しなくてはならない”わけじゃないはずです。そんなことをしなくても、皆で脱出口を探せば……!」
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