マシュクールの蒼天

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                1440年9月15日──。 フランス、ポワトゥー伯領のマシュクールの空は快晴であった。 燦々と降り注ぐ陽の光の下、木々の梢に止まる鳥達は囀り、或いは蒼空へと羽ばたいていく。 ここにはこの国で長年続いている戦争の猛威等一切及んでいない。そう思わせる程にその日のマシュクールは静かだった。 しかし、その空の下に広がる光景は、快晴には似付かわしくないものだった。  数十名の騎馬隊が或る城の門の前に整列していた。騎馬隊を率いるのはブルターニュ公国の武将ジャン・ラベである。また、その横には公証人のロバン・ギョメの姿がある。ラベも、ギョメも、その他の騎士達も、皆一様に険しい表情をしている。
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