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「ど、どう致しましょう?」
公証人ギョメは右手の馬に騎乗する隊長ラベに聞いた。
「迂濶に攻撃を仕掛ける訳にはいかん。奴は腐ってもフランス王国元帥、相当の猛者よ。それにあの城には我等の何倍もの兵がいると聞き及んでいる。そいつ等が打って出てきたら我等は壊滅してしまう。今はただ、奴が大人しく出てくるのを待つしかあるまい………。」
ギョメに聞かれたラベは、憎たらしげにそう答えた。
マシュクール城の前に居並ぶ騎馬隊一同は、城門が開かれるのを固唾を飲んで待ち続けた。
暫く、辺りには静寂が流れた。
やがて、悠久の時が過ぎたかと思われる頃、静寂は跳ね橋を降ろす音で破られ、次いで城門が不気味な音をたてて開け放たれた。
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