9人が本棚に入れています
本棚に追加
普段は余り物事に動じない青年が、落ち着きなく辺りを見回している。心なしか青年の意識は裏門の方に集中しているようだ。
「この場から逃げ去ってしまいたいか、プレラーティよ?」
ジルは青年──フランソワ・プレラーティにそう尋ねた。その言葉を聞いて、今まで辺りを見回していたプレラーティは前方に視線を戻した。
「プレラーティ!貴様、よもやあの小僧や召使のように御主人様を見捨てて逃げるつもりか!?」
禿頭の司祭は怒髪天を衝く勢いで麗しき青年に詰め寄った。
「め、滅相も御座いません。私は寵愛を下さった愛するジル・ド・レ男爵閣下と運命を共にする覚悟に御座います。」
そう言うと、プレラーティはジルの傍に駆け寄り彼の手を取り握り締めた。
最初のコメントを投稿しよう!