秋の蛍

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秋の蛍

どこかにぶらりと旅行にでも行きたい。 僕はふとそう思った。 何かそう思わせるような理由があったわけではないけれど、そう思った。 暑い夏が終わり、涼しい風が吹く秋になっていた。 木々は葉の色を変え、これから訪れる季節に備えようとしている。 夜になれば虫が鳴く。 彼らは、これから訪れる冬を前に、子孫を残すために異性を求めていた。 僕は都会の真ん中にいた。 無機質なコンクリートの塊の中で、何を考えるでもなく、日々同じことを繰り返していた。 僕はそんな退屈な日常から抜け出したかったのかもしれない。 とにかく、今すぐにでもこの都会を離れたかった。
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