秋の蛍

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家から一番近い駅に着いたが、僕はまだどこに行きたいのかわからなかった。 もしかしたら、行先なんてどこでも良かったのかもしれない。 とりあえず、自動券売機で買える一番高い切符を買って、電車に乗り込んだ。 電車の中はひどく混み合っていた。 なんとか座席に座り、僕は窓の外を眺めた。 電車は無機質な街を縫うように走った。 駅で止まるたびに、大勢の人々が電車を下り、そしてまた違う人々が乗り込んできた。 どの顔も僕の知った顔ではなかった。
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