秋の蛍

9/59
前へ
/59ページ
次へ
やがて列車は小さな駅に止まった。 僕は列車を降りた。 駅には駅員すらおらず、車掌が切符を集めるために電車を降りてきた。 僕が車掌に切符を渡すと、車掌は切符をじっと見つめてから、「料金が足りない」と言った。 僕はポケットから財布を取り出し、不足分を払ってから駅を出た。 駅の前には何もなかった。 コンビニも自動販売機も、そして人混みもそこにはなかった。 あるのは一本の細い道と、バス停と古ぼけたベンチ、あとは一面に広がる、稲の刈り取られた後の寒々とした田圃だけだった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加