のーずへあー

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 正直、映画の内容なんて一欠片も頭に入ってはいなかった。そもそもがただ良いムードを作るための道具であるからにして、そこまで内容を気にして借りた訳ではない。ただ目に付いた恋愛作品を借りてきたら、このペットショップさながらの鳥たちのランデブー(笑)だったのだ。  やがて、主人公とヒロインは様々な障害を乗り越えて、とうとうベッドイン。あくまでもぼやかして描かれてはいるが、見るからにぎしぎしあんあんなシーンである。  僕はさりげなく、隣に座る美代ちゃんを盗み見た。 「ぅ……」  天使か。  あなたは天使なのか。  顔を赤らめて、とても恥ずかしそうに俯く天使の姿がそこにあった。その初々しい反応は、彼女がまさしくこういったことに耐性を持っていない証拠である。つうか処女。間違いなくこの娘処女でっせ。  良い雰囲気のまま、映画はクライマックスを迎え、静かな音楽と共にエンドロールが流れた。そして僕はそれが終わりきる前に映画を止めた。一生懸命製作した方々には申し訳ないが、ぶっちゃけ音響の人の名前とか興味持って映画見る人いるの?  そして。 「……美代ちゃん(キリッ」 「は、はいっ?」  僕イケメンw  そして美代ちゃんイケガールw  今時「は、はいっ?」とかそんな丁寧な口調で男子に接する女の子なんて、二次元か絶滅危惧種ですよ。敬語萌えっ!  よし、あとはここで「髪にごみが付いてるよ」とか「君の瞳に献杯(生前のあの人は云々)」とかいったキザなセリフで彼女の体に触れば、雰囲気に流されて美代ちゃんもロストバー(略  落ち着け、僕ぅ……。  男にはやらねばならぬことがある。そこで絶対に失敗してはならないのだ。ここは余裕たっぷりに彼女をリードしてあげられるように、百戦錬磨なダンディ親父さながらのさりげなさを装わなければ! 「かかかかか神にごごごご五円玉をもらえるように祈りなさい!」 「は、はいっ! ……えっ? あ、はいっ……」  なにしとんじゃ僕のボケェ!  よりによって五円て、五円玉をもらえるように神に祈りなさいて。あああああもう僕の完璧な計画はおしまいだどうしようどうしようどうしようそうだリュークこいつらの名前をノートに(略  しかも美代ちゃん律儀に「神様、五円ください……!」とか祈っちゃってるし! ごめんなさいめっちゃ可愛いです!
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