のーずへあー

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 五円玉だけに(じしゅきせいなのー)と御縁がありますようにとかそんな下ネタじゃあるまいし、一体何をトチ狂ってそんなことを言ってしまったのか自分にも分からないが、過ぎたことを蒸し返しても仕様がない。  僕が今考えるべきは、この空前の危機をどう乗り越えるか。絶後と言い切れない自分の性格がとっても悔しいです!  べらんめぇ、男は当たって砕けろでぃ! 「美代ちゃん! 突然で悪いんだけどキスしよう!」 「死ねゴキブリ」  ……はて?  今、何か天使の口から有り得ないような単語が聞こえたんだけど、気のせいだよね。なんか真っ黒CROSS GATEがなんとかかんとか……うん、やっぱり僕の勘違いだよな。あれは天使と呼ぶよりむしろ黒い悪魔だし。 「み、美代ちゃん?」 「はい、何ですか?」  ほらやっぱり。  ははは、まったく僕の耳ったらマリモでも詰まってるんじゃなかろうか。美代ちゃんに失礼だよなぁ、まさかゴキなんとかとかいう生物の名前が美代ちゃんの口から出たなんて勘違いするなんてさ。  改めまして。 「美代ちゃん、恋人になった記念に、キスでもしようか?」 「半径六億キロ以上近寄るなサナダ虫」 「…………」  泣いて良いですか?  当たって砕けろどころか、当たって塵も残さないくらい木っ端微塵になったんだけど……。サナダ虫ってあれだよね、人間の体に寄生する超グロテスクな……生まれ変わりたくない生物万年ベスト3入りしてそうな。  そうだ、死のう。  すると、世のはかなさを恨んで死のうと考えた僕の服の裾を、美代ちゃんが何故か赤らめた顔で掴んでいた。 「あ、あの、ごめんなさい……私、小さい時から口が悪くて。直そう直そうとは努力してるんですけど……緊張するとつい素が出ちゃって。こんな言葉遣いだから彼氏も出来なかったんですけど……本当にごめんなさい」 「は☆は☆は☆、そういうことならオールオッケーさ。僕と一緒に愛の力で言葉遣いを直していこうじゃないか」 「愛とかウンコみてぇにクサい言葉ほざいてドヤ顔すんなカメムシが」  ……やっぱり泣いて良いですか?  でも、この程度で心が折れているようでは男の名が廃るよな。ちょっと予想外だったけど、本人も気にしてるようだし、意識しなければなんとかなるよね、うん。頑張れ僕。
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