5人が本棚に入れています
本棚に追加
「はっ?」
とても自然な動作で頭を撫でられて、素っ頓狂な声を上げる。
そして、子供扱いだと気付き、やめてほしくて、恩人ではあるけどつい、上目遣いに睨んだ。
「あー……、もう落とすなよ?少年。」
睨んだのに、彼女は怯む様子もなく、ほんの少し眉を上げて、また笑った。
「……っ、」
その笑顔が、少し今までのと違って、あまりに綺麗で、かっこよくて、一瞬息を飲んだ。
手は、ぽんぽん、と数回、軽くはたくように頭を撫で、するりと離れる。
「こっ、子供扱い、しないでください……。」
なんだか悔しくて、少し熱い頬を無視してそう言った。
「ん?あぁ、ごめん?」
あまり心の篭っていない謝罪が帰ってきた、……むぅ。
「さて……、待ち合わせに遅れちゃうし、お喋りはこれくらいにしようか。」
不意に彼女がそう言った。
「あ……、すいません。」
なんとなく悪い気がして謝ると、また彼女は一瞬きょとんとして、やっぱりまた笑って、じゃーね、って言って、去って行った。
さりげない出会い、呆気ない別れ。
ぼんやりと撫でられた頭に手をやって、温もりを思い起こす。
はたと我に返って、何をしているんだと恥ずかしくなって俯き、コートのフードを深く被り直した。
(……あれ?)
_
最初のコメントを投稿しよう!