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「これ、を……持ち主……えっと、アイサカ、さん?に……。」
名刺入れを警備員さんに差し出し、地図を書いてもらうために、と一枚拝借した名刺を見ながらそう言う。
真っ白な紙に印刷された氏名は『藍坂 紅嵐』で、振り仮名やアルファベットは、無し。……苗字はまぁ、読めた。多分。
けど、この名前……紅色の嵐……格好いいな、僕の名前と交換したいくらいだ、読み方わかんないけど。
……読み方に関しては僕もヒトのこと言えないから、良いんだけど。
そんなことをぼんやり考えながら、警備員さんが名刺入れを受け取るのを待っていたんだけど、彼は、アイサカ?と首を傾げてしまった。
(あ……、読み方、違ったかな。)
だとしたらちょっとショック。苗字はちょっと自信あったんだけどな、なんて思いながら、
「この人、わかりません、か?」
と、名刺を差し出した。最初からこうすれば良かったなと思いつつ、返事を待
「ああ、クランちゃんか!」
……待つヒマも無かった。
名刺に視線を向けた男のひとは、一瞬で答えを導き出し、満面の笑顔。
てかクランって読むんだ、紅嵐、格好いいな紅嵐。
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