03.再開

2/3
前へ
/10ページ
次へ
「えっ、あ、」  置いて行かないでくださいよ!と思って手を伸ばしかけた僕に、藍坂さんが振り返る。 「さて……少年は、何の用かな。私に用が有るんだろう?」  そして、そう言いながら首を傾げた。 「あっ……、」  僕は慌ててポケットから名刺入れを出して、藍坂さんへと差し出した。 「こ、これ……落とした、みたいだったので、届けに。」 「……私の名刺入れ……かな?」  首を傾げながらそう確認する藍坂さんに、コクコクと頷く。 「……ぷっ、」 「え、」  いきなり、藍坂さんが吹き出した。 「あははははっ!」  固まる僕をスルーして、藍坂さんは爆笑し始めてしまう。  バンバンと壁を叩いて笑う藍坂さんの前で、周りからちらちら向けられる視線に、いたたまれない気分になった。 「あー、笑った。」  そう言って、笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら、藍坂さんは息をついた。 「……何がそんなに……?」  純粋に気になって首を傾げて聞くと、 「いや、少年の落とし物を拾った私が、その直後に落とし物して、少年に届けて貰う……というのが滑稽だっただけだよ。」 と、けろりとそう話す藍坂さんに、若干ついていけない。 「……おれ、藍坂さんのツボがわからないです。」  正直にそう言うと、藍坂さんは、よく言われるよ、と、また笑った。 _
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加