第一章 始まりの音(仮)

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じゅー… くるん。 手慣れた手つきでひっくり返す。 少年は、フライパンで焼いていた卵焼きとウィンナーを一皿に盛り付け、その横に冷蔵庫から出したトマトとレタスを添える。 そして、作った味噌汁を器に入れていく。 それらを机へと運び、頂きますと言いながら合掌をして黙々と食べ始めた。 少年の家族はいない…、 正確に言えば ・・ 今は、である。 兄の清志郎は、出張。 兄の嫁の蕾は朝勤で少年より早く出ていったらしい。 なので、先程階段から降りてきてリビングへと入ると机の上に、 [昌君ごめんね!朝早く電話がかかってきて今から仕事に行くね!お味噌汁とご飯は焚けているからおかずはよろしく。学校頑張ってね!蕾より] というメモを見つけた。 昌…。そう、少年の名は昌。氏を土御門という。 年は今年で15歳と見た目に反して幼い顔立ちをしている。 兄の清志郎は24歳で昌とは九つも上だ。 昌とは違い、その年に似合わない落ち着いた雰囲気と冷静な判断、そしてその風貌で学生時代かなりモテたらしい。 そんな兄の職業は小説家。 清志郎の嫁、昌の義姉の蕾は清志郎より一つ下て23歳。 優しく、的確な判断、家事も完璧とまさに良妻賢母な女性で昌と仲が良く本物の姉弟のような関係だ。 蕾も清志郎に出会う前はかなりモテて、これは今も現在進行中である。 □■□■□■ 昌は食べ終わるとご馳走様と言いながらまた合掌して、手早く皿を片付けた。 朝早く起きたため、学校へ行くには少し早くその間ニュースでも見ようと、キッチンででインスタントコーヒーを入れ、リビングの横になれそうな大きなソファーの上にドカッと座りリモコンに手を伸ばした。
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