序章

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「フェイズ6から7に移行。メイン、サブ動力共に安定出力域を保っています」 「ああ」 「動体プログラムに異常なし。機動レベルを3に維持し、アクティブシークエンスを試行します。…………問題なし。オールクリア」 「うむ」 「パイロットの脈拍、体温に異常なし。心拍数誤差内。保護機能の作動を確認。安全装置に問題ありません」 「そうか。というかもういいだろう。簡単、簡潔、端的に結果を言ってくれ」 女性科学者が面倒くさそうに言うと研究員はさらにいくつかの項目を確認してから、告げる。 「全機能の運転は想定範囲内であり、決定的な問題は見られません。これは、つまり……」 言葉を区切る。 そこでまた静寂が生まれた。 さっきまでは信じられないといった気持ちからのものであったが、今はその研究員の次の言葉に期待している沈黙だった。 部屋の全てが一人の研究員に注目する中、女性科学者だけが自分で聞いておきながら欠伸をしていた。 そして数瞬の後、沈黙に耐えきれなくったように研究員が告げる。 「…………最終動作確認実験は、成功です」 誰かが叫んだ。 次の瞬間、部屋の中は歓喜の声で満たされる。
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