始まりの瞬間

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私は思い切って窓を開けた。 バンッ! 下を見下ろして少し擦れてしまった声で言った。 「あ、あの…っ!!」 下にいるあの人がドリブルを止めて見上げてきた。 「…なに?」 いつもは横顔とか上からの顔しか見てなかったので、真っ直ぐ向けられた顔に少しドキドキした。 で、でも… 文句じゃないけど、言わなきゃ! 勉強してるんだって! 「あ、えっと… 私、橋本沙恵って言います!」 「…はぁ」 あの人は困惑した様子で返してくる。 「…え、えっと… 私勉強中なので… あの…少し静かにしてもらいたくて…」 「…は?」 あの人の迷惑そうな顔に少したじろいでしまった。 「え…えっと…」 「公園だから、そんな文句言われてもね~」 「……」 何も言えなくなってしまった私。
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