岩崎苺

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「あの子いつもマスクしてへん? 少し気持ち悪いね」 「関わらん方がええよ。目つきも悪いし」  耳に入ってくる距離の場所でそんな声が聞こえた。苺はそれが自分のことだとすぐに分かった。  聞き慣れた言葉だ、と心の中で思う。  苺は教室の一番後ろの窓側の席に座り、外の景色を眺める。  桜が咲き誇り、新入生を迎えるこの季節。  中学までの自分を消し去りたいから、誰も知り合いのいないこの高校を選んだ。  入学して三日経った。  周りは必死に友達を作ろうと励む。わたしに話し掛ける生徒もいた。しかし、会話は続かず遠退いた。  友達はまだ一人もいない。  そんなわたしは徐々に自分と周りとの距離が埋まらず、逆にどんどん離れていく。   そんな想像もしたが慣れっこだ。
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