~深い闇と一筋の光~

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    「なぁ……もし良ければあんたの主の事、教えてはくれないか?なぁに、この情報は悪いようにゃ使わんさ」 「……主の名は爲謠(イヨウ)。不老不死の霊薬、変若水(をちみず)を研究する医学者だ。材料探しという名目で自由気儘にこの世界を我らと共に回っていた」     少し間を置けば静かに問いかけてきたこの者……この時、我は否定する事も無く自然と己の口から言葉を並べていた。 ……何故かは判らない、得体も素性も知らない赤の他人。しかしこの者になら、主の事を教えてもいいと何故か思ってしまった。     「初めから主と共に居たわけではない。我自身、一度命を落としかけた。瀕死の我を見つけた主は自らの五感の内の一つ、《触覚》と引き換えに、元は人の身だが瀕死だった我を今の新たな命として生み出した」     述べる言葉はと切る事無く、そして思い出すだけで己の手が怒りで震えるのが判る。命掛けで我を救ってくれた主、それを救う事が出来なかった己の未熟さ、その未熟さ故に……我が主を殺した。     「主は……主に恨みを持つ心無いに人間により我と共に捕らわれた。拷問により我に与えられた痛み、それは感覚を共有していた主に耐えきれる物ではない。体力的に優れていた故に我は生き残った……だが」 「あんたの主は耐えれなかった……と」     我が口を開くより速く、目の前の者が口を開いた。そして我の握りしめる拳からは血が流れ、紅の雫となり地面に滴り落ちる。     「人間など身勝手な生き物だ、己の欲望のみに従い、私利私欲の為には他人を利用し、切り捨て、尊いその命すら奪う。だから我は決めたのだッ!奪われるのなら先に奪う、味わった事の無い程の絶望と憤怒。それをその身に刻み付けるとッ!」 「……で、どうだった?奪う側になってみての感想は」     その一言にしばらく、言葉を失った。しかしそれもつかの間、少し息を吸い込めばため息に似た笑いを溢す。     「フッ……ハハッ!下らん、実に下らない物だった。生前に罪を背負い地獄に堕ちた者を何人、何百と斬り捨てようと、首を刈ろうとも我が満たされる事は無かった……それもそうだ、我が求めた物はそれではない、そして判っていた……その願いも儚い夢だと……な」
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