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町外れの郊外、今宵の月は満月。
ただ一人、妖艶な月明かりに照され目的も無くさ迷い歩く。
「……」
ふと違和感を感じ足を止めれば星が煌めく夜空を見上げ、ただ一言……呟く。
「……いつまで着いてくるつもりだ」
「あら、バレたか」
満月を背景に重力に縛られる事無く空に浮かぶ人影、漆黒の翼を広げ月夜に照らされたその表情は笑みを浮かべる。
「こんばんは、お兄さん。ちょっと取材とか……っておわっ?!」
「……何を言っている?」
己の影を一度力強く踏み込めば影の一部が不自然に盛り上がる。次第に形となったその影は言うならば漆黒の杭。
なにものにも染まる事の無いその杭を数本作り上げれば鋭い先端が上空の男を狙い勢い良く放たれた。
「あぶっ!?ちょ、おまッ……ストップ、ストップ!タイムだ!待ッだるまさんが転んだっ!」
「……?」
不思議な言葉を並べる男に思わず攻撃の手を止めてしまった。
しかし彼とのこの出会い。それこそが大きな分岐点となる事を……この時の我は知るよしも無かった。
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