~始まり~

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  ───────†───────     ふと目が覚める……夢か。 何度か目を擦り睡魔を振り払おうとするが瞼は重い。うっすらと目を開けば視界がぼやけ、だが少しずつ、確実に視界が正常になり始める。 五、六メートルの正方形の部屋。正面には木製のドア、両方の壁には棚が隙間なく並び、その棚の中には自分がまとめたファイルがこれまた隙間なく並ぶ。 真ん中に設置された一人用のソファー、少しスペースがあきその正面には木製の机、そして椅子に腰掛ける俺。いつもの見慣れた仕事場を天井に設置されたランプの淡い光が照らし出し、背伸びをしながら辺りを見渡す。 そしてなんで俺……自分の机で寝てたんだっけ?     「……あぁ、そうだ。今日中にこの集めたネタをまとめ……あッ!」     俺が昨日の睡魔との乱戦で見事に負かされ眠りにつく前、自問自答の末、全てを思い出せば眠気など吹き飛び先ほどまでうつ伏せになっていた机に散乱した紙を俺は慌ててまとめ始める。     「だぁぁぁぁ……しまったぁ、あと数ページ残ってやがる……営業前までに間に合うか?」     ぐしゃぐしゃと寝癖の付いた自分の髪を片手で溶きながら目の前の資料に目を通す。 ──音がする。視線だけを古びた扉の扉に向け、手の動きを止め出来るだけこの部屋から音を消し次の反応を待つ。     「……主(あるじ)、失礼する」     呟く様に、囁く様に。注意深く聞いていなければ聞こえない様な男性の声が扉の奥から聞こえる。     「あぁ、八咫(やた)か。開いてっから入れ入れ」 「……では、失礼する」     ドアノブが回り出来るだけ音をたてまいとゆっくりとドアが開く。しかしなにぶん古びた構造ゆえそう心掛けても扉は軋み、不気味な音を奏でる。   黒い長髪が乱れに伸び、黄色の装飾が施され全身黒のローブを羽織る男性。 瞳は一言で表すなら《闇》光が届かず深く黒曜の瞳は何を映し出すのか──八咫烏(やたがらす)、それが彼の名らしいが俺は親しみを込めて八咫と呼んでいる。     「んーで、どうしたんだ?」 「……客人だ」 「あぁ?!もうそんな時間帯かよ!?……あぁ、しゃーねぇ。客なら仕方ない、通してやりな」 「御意……主の許可が出た……入れ」     八咫の言葉の後に続く様に一人の男性が恐る恐るこの部屋を除き混む。 新顔だな……     「ようこそ、お客さん。なんでも揃う情報屋本店へ」
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