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「少々驚いたが……タネが判ればどうと言う事はない。次は先ほどのタネを暴かせてもらおうか」
「ほう……中々大きく出てきたもんだ。しかし判るのか?あんたに……ってあれ?」
言葉の途中、先ほどまで余裕の笑みを見せていたが次第に身に起きた異変に表情が曇り始める。
その原因は奴の足に絡み付く奴の《影》
二度、三度と足を動かすが取れる気配の無いそれに焦りが生まれる。
「ちょっと待った。一時中断、なんか足に絡み付いてきやがった」
「己の影に何を嫌がる必要がある?」
我が言葉を放つと同時に再び距離を積める為地面を駆ける。
まるで蟲を潰した様な苦い笑みを浮かべると奴は刃をしまいその提琴を構える。
「ったく、冗談きちぃぜ。アクシデントにもスマートに対応する俺のライブをご覧あれってな、ハッ!」
「……!」
気合いの込もったかけ声と同時にその提琴からは甲高い音が奏でられる。
それと時同じく巻き起こるのは疾風、その風は圧縮され球体となると奴が奏でる音色に合わせて不規則に宙を漂う。
「動けないなら仕方ない、ちっとばかり盛り上がりに掛けるがな」
「くっ……」
一層音が強くなればその球体は弾丸となりこちらに向かって飛んでくる。
幸いその軌道は直線的で避けても後を追って来る訳でもない。厄介な点と言えばとてつもなくその風の球体の動きが早いと言うことだけか。
「フッ!」
「ってあら?ちょッ!」
その弾幕とも言える空間の僅かなスペースを見つければ、その間を縫うように駆け抜ける。
「おまッ、この中駆け抜けるとかマジ勘弁ッ!」
素早く仕込み提琴を構えれば降り下ろした我の刃を受け止め、先ほどまで余裕が見えていたその表情を曇らせる。
……ここまでしてこの場から動かないのだ、先ほどの瞬時に我の前に現れたあれは空間移動といった物では無さそうだ……ならば。
再び距離を取り地面を強く踏み込む。己の影から幾多もの黒曜の杭が作られそれは逃げ場も無く奴の回りを囲む。
「これで下手には動けんだろ?潔く散れ」
「……すぅー」
身動きが取れないにも関わらずこの男は息を吸い込み始める。そして一斉に杭の先端が男に向かって飛ぶ。
「らあぁぁぁぁぁあ!」
勢い良く巻き起こるのは突風。男が声を上げれば杭は風に阻まれ男に届く事は無かった。
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