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意識するより速く。
気づくより速く。
反応するより速く。
答えはこうも単純だ、ただ俺は恐ろしい程速く動けるだけ。
この蹴りの勢いに耐える事が出来ずに吹き飛ばされた日烏が起き上がりこちらを視界に捉える前に俺は《足元》の日烏をしっかりと踏みしめ笑みを浮かべる。
「よっ。あんたにゃ俺の特別ステージを間近で聴いていただきましょうか」
「この程度……ッ!?」
「ククッ……動けねぇだろ?」
予想通りの反応に俺は満足すればギターを構え足元の日烏に笑みを向ける。
力強く踏んでる訳ではない、むしろ足を軽く乗せているだけで日烏は痺れた様に手足を痙攣させている。
「ケホッ貴様……なにをッ?!」
「胸の中心にゃ迷走神経ってのがある。そこを強く打てば、《心臓が異常な事態に陥っている》って脳が誤認して心拍を抑える命令をだす。つまり今の結果に陥る訳だ、オーケー?」
必死で手足を動かそうとするも、それは軽く地面を跳ねるのみで俺を振り払う力はない。
しかしこれも一時的、寧ろあと数秒もすれば自由に動き出してもおかしくはない。つまりやる事はもう一つだ。
静まり返るこの辺りに突然甲高い電子音が響き渡る。俺が持つギターから放たれ、俺が指を操り玄を弾けばそれはメロディとなり、一曲の音楽が奏でられる。
その曲調はロックに近く、俺が玄を弾くと同時に辺りに風が舞う。
初めはそよ風だったそれも曲調が激しくなるに連れ微風となり、風となり、突風に変わり、小規模な嵐となる。
「……ハッ!さぁ……フィナーレだ!」
「ッ……グッ!」
今や辺りは突風が吹き乱れ、俺が奏でる音楽に合わせる様に風が舞う。
舞うは嵐、吹き荒れる血染めの風。
刃と変わったその風は足元の者を徹底的に、微塵の容赦なくその身体を切り刻む。
「ッ……ぐぁぁぁぁあッ!?」
しばらくもすれば風も収まり辺りは嘘の様に静けさを取り戻す。枯れ果てた木々には鎌鼬の様に鋭い爪痕が残る。
俺以外を無差別に襲った刃の嵐、それは足元の者も例外では無く地面を紅で染め上げる。
「そして残るのは静寂のみ……ってな」
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