現実とゲーム

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朝の短い時間を有意義に使おうと俺が寝ていると、唯一の友達がこんな話をしてきた。 「なぁ、ゲームとかに入れたら面白くないか?」 安眠妨害だ。 「落ち着け、とりあえず水飲んで来い。な?」 「正気だよ!」 怒鳴られた。冗談だってのに。「わかってるっつの。冗談だよ、冗談」 「そうか?」 何故だ。疑いの目に見える。 話題を戻そう。 「ゲームに入れたら? だっけ?」 俺が聞くと、そいつは、 「ああ」 と言って、全く頼りがいのない胸板を目一杯張ってからこうのたまった。 「だって勇者だぜ勇者。想像しただけで……もう、こう、ひゃっほうぅぅ! ってなんねぇか?」 「なんねぇよ馬鹿」 「えー、そうか?」 「ああ」 でも、もしも。 ゲームに入れたら面白くないか? 「今ちょっと考えただろ?」 「ん、悪いかよ?」 「悪かねぇよ」 そいつは気色の悪いウインクをした。 朝はそこでチャイムに邪魔をされた。 席につき、授業の準備をしながら、本当に入れたらと考えていた。 ありえない事を考えるのは人間の特権だしな。
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