平凡、日常

11/13
前へ
/18ページ
次へ
下駄箱から靴を出して学校の裏門へと足を運び、上空を烏が飛んでいくの二人で眺めながら歩く。久我と柴田の家は幼馴染なだけあってか当然近くにあり、帰り道も同じだ。暗くなりつつある空の下を特に話すことも無く、思いついた話題をなんとなく話しながら歩いていると、柴田が不意に口を開いた。 「叔父さん、元気か?」 「単身赴任中、まぁ元気だと思うよ」 「……そうか」 柴田はそう言うとまた黙って歩き始めた。 久我はなんとなく彼が何を考えてるかわかった気がしたが、余計なことにならないように黙っていた。無言の柴田を放って道沿いの林に目を向けていると、いきなり彼が声をげる。 「あのさ!今日俺じいちゃん家に泊まるつもりだけど。どうせこの後千暁暇だろ?」 「……」 「じいちゃんに久々に顔出してやってよ。会うのも久しぶりだろ。向こうだって千暁が来たら孫の俺が来るよりより喜ぶし。な、来いよ」 「颯のじい様には悪いけどまた今度顔出すよ。今日は予定があるの」 「少しでいいよ。顔出すだけ」 「嬉しいけど、また今度ね。誘ってくれてありかとう」 柴田は何か言いたげな顔をしてたが、久我が小さく微笑むと諦めたのか難しい顔をしていつも通りに歩き出す。じい様の家に行くというのは咄嗟に言ってしまったのか、彼はまだそわそわしている様だった。 「それにじい様に会ったら、颯と一緒にお稽古つけられそうだし」 「うげ……やりそう」 じい様の稽古を思い出したのか、颯は苦虫を噛んだ様な顔をしている。颯の祖父の家は、道場の家系で颯が剣道をやり始めたのも祖父の影響からだ。じい様は歳の割りにはえらい強く、稽古なんて地獄そのものと言えるようなものだった。 元気なのは何よりだが、途中で辞めてしまった久我のことを何よりも嘆いており、あう度に寂しそうな目をして彼女を見つめ、昔の話をする柴田の祖父に柴田と同じ匂いを感じ、最近はめっきり顔も出さなくなってしまっていた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

815人が本棚に入れています
本棚に追加