平凡、日常

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柴田颯は久我千暁の幼馴染という奴だ。 3人兄妹の一番上で下に年の離れた双子の妹がいる。お兄ちゃん体質の血が騒ぐのか、危なっかしい久我を放っとけず、高校まで一緒ときたもんだから彼女の面倒ごとを一身に引き受けてしまっている。 久我には姑のごとく説教をする時が多々あるが、不登校気味の彼女の数少ない友人であり、子供の頃から一緒にいる兄妹みたいな存在だ。たまに鬱陶しいくらいの心配性だが、一緒にいて一番落ち着く人だと彼女は思っていた。 しかし最近、その一番落ち着く兄妹から痛いほどの視線を感じる。 正確にいうと頭を凝視されている。颯は相変わらず参考書を読む彼女を斜め上からじっと眺めている。放っておこうと思ったが落ち着かない。 思い直した久我は流し読みをしていた参考書を机に置くと顔を上げ、意を決したように口を開いた。 「あのさ」 「ん、なに?」 なにとはこっちの台詞だと彼女は内心でつっこんだ。 無表情で頭を凝視していたらそりゃあ突っ込みたくもなる。それに、いつもにこにこと笑っている颯が真顔なのは、少し気味が悪い。 「人の頭、真顔で見てくるのやめて」 「え?」 「金髪なんて珍しくもないし、じろじろ見ないでよ」 「まぁそうだけど」 「じゃあなに。集中出来ない」 いつもより勝気な態度を柴田にとれば、彼は少し困った表情になる。 久我は彼の困った表情が苦手でいつもは話を逸らしてしまうが、今回は”気味が悪いこと”を辞めてもらうためにも目を逸らさず彼を見た。 最初は誤摩化そうと苦笑いを浮かべていた柴田も、折れない彼女の態度に負けたのか、肩を落としながら目を逸らしぼそりとつぶやく。 「何で、金髪にしたの?髪だってずっと長かったのに。ベリーショートって。ずっと髪長くて染めてもなかったのに。そりゃあちょっとは、気になるだろ……」 「……女々しい」 「えぇー……だってさぁー……」 私の返答にだから言いたくなかったんだといいたげな表情で柴田が視線だけを彼女に送る。
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