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久我は呆れたようにため息を吐いて、視線を参考書に戻す。そんな彼女の様子にまだ言い足りない様子の柴田が不機嫌そうに彼女の机に腕を付いていた。
颯は背は高いし、頭も悪くはない。
学校では割と目立つグループにいて大声で笑っている上に、剣道部の主将で威圧感の凄い真面目なエースという一面を持ち合わせている。それなのに、妹達や久我の事になると掌を返したように大人しくなり心配性の保護者だ。
そんな柴田が今まで手塩にかけて育ててきた問題児の幼馴染みが高校に上がった瞬間急にばっさり髪を切ったことにショックを受け、ようやく受け入れられて来た頃。二年生になった彼女はブリーチをして金髪になって登校してきた。
こんな大きな変化に、過保護の柴田さんが心配しない訳が無い。
案の定どちらの時も数分は固まり、目を丸にして静かに驚くと誤摩化せきれてない動揺をその日一日見せつけてくれたものだ。
「心配してくれてるのはわかってる。でもそんなに深刻にならないでほしい」
「深刻になんか!なってないし。でもさ、心配してんだよ。なんかあったのかなとか。ほら、例えば俺の妹達がいきなり金髪にしてきたらさ、どーよ」
「……それとこれは、話が別じゃん」
「いやいや、同じだって」
「私の天使達を穢さないで」
「例えばだから!千暁も同じ様に心配してるってことだからね!」
柴田の双子姉妹はまだ小学生で、笑顔が眩しく久我にもよく懐いていた。
金髪の姉妹。想像しただけでぞっとした。しかし、流されるわけにもいかない。
双子姉妹が本当に金髪になったわけでもあるまいし、ましてやただのお世話している程度の幼馴染だ。柴田ぞっとする理由が無い。
いくら幼稚園からの付き合いだとしても、彼女のイメチェン事情に首を突っ込まれる筋合いは毛頭無いのだ。
「だからな、千暁は俺の妹達レベルに面倒見てんだぞ。その千暁がばっさりショート!突然の金髪!反抗期からの反抗期!一体どうしてこうなったんだぁー!」
「うるさい、颯。座って」
身を乗り出す様にして久我に顔を近づけ、涙目で同意を求めるように見つめてくる柴田の肩を掴んでとりあえず座らせると、これ以上無いほどの冷たい目線を柴田に送った。
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