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「颯の妹達はまだ小学生で私とは歳も、可愛さも、関係も、立場も違うの。私の事親友として心配してくれてるのはありがたいけど、もう私は高校生だし、颯は私の親じゃ無いんだからいちいち私の行動に口出ししないで。鬱陶しい。」
「……う。すいません」
「いい加減子離れしないと妹達にも嫌われるわよ」
「子離れって……」
刺のある久我の言葉に柴田はしょぼくれて縮こまり、いまいち納得のいかなそうな表情をで彼女を見つめていたが、そんな彼の様子を無視した彼女は、まだ読みかけだった参考書に視線を落とした。
颯もようやく諦め、少し不機嫌そうにしていたが、その内また違う話題を話し始めた。
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「颯ー!あのさーこの間のことでさ!……あ、話が有るんだけど、ちょっと来て」
しばらくすると誰かが柴田を呼んだ。
呼ばれた声に柴田と同じ様に久我も視線を上げれば、彼の友達らしき人達が雪崩れ込むように教室に入ってきた。そして、久我を見るや否や、気まずそうに手招きしている。
颯が一緒にいるのを時々見た事があると彼女は思った。それと同時に居心地の悪さも感じた。柴田は学校でも明るいグループにいる奴だ。自分は浮いている存在であり、問題児だ。
その事を明確にされているようで、時々どうしようもなく独りでいたくなる時がある。
「おい、颯!こっちこいって!」
呼ばれている当の本人は少し行きたく無さそうに、椅子の上に横向きに座ると両足を乗っけて体を揺らしていた。なかなか動かない彼に、きっとあの人達の気を悪くしてしまう。
久我は身に覚えのある状況と感覚に焦りを感じ、颯の肩を慌てて強く押した。ぐらついて咄嗟に地面に足をつけた柴田が不服そうに彼女を見る。
「わ、なんだよ、あぶないな」
「早く行って。友達、呼んでるじゃん」
「別に大丈夫、後話せば。今千暁と話してんだし。あいつらが来たらいい」
「大事な話かもよ。いきなよ」
「いいって。それでさ、妹が犬飼いたいって話」
「いって」
少し手が震えてしまった。指先がすぅっと冷たくなる感覚。
相手を待たせたり、強く指示されるのはやっぱり苦手だ。
久我は少し気分が悪くなった気がしたが、気付かない振りをして小さく柴田を睨むと、早く行ってと、もう一度小さくつぶやいて強く彼の背中を押しやった。
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