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柴田はかなり不服そうな顔をしたが、久我の表情をみると硬い表情で大丈夫かときいてきた。また彼女が睨むと、呆れた顔をした柴田が友人達に今行くと声をかけて立ち上がる。
その声に安心して、俯きながら小さくため息を吐いた。
柴田達の気配が遠のくのを感じ、久我はゆっくり深呼吸をする。
冷たくなった手で腕を擦った。何故だか時々、久我は急に不安な気持ちになる事がある。
強気な態度を取りがちだが、自分は普通の人より脆いのではないかという気持ちが彼女にはあり、自分の事がもっと嫌になった。
時々感じる不安や、得体の知れない恐怖。不登校気味になりがちなのは、そのせいもある。
また一つ溜め息をつく。そしてまた、小さく深呼吸をする。
久我はなんだか眠くなってきて、机に頭を付けて静かに目を閉じた。
「千暁。大丈夫か。ちょっと寒いからクーラーの温度上げてきた」
急に背中に暖かさを感じ、驚いて勢い良く頭を上げた。
柴田が心配そうな表情で覗き込み、背中を撫でてくれている。
あんたまだ行ってないのかという言葉が久我の頭に思い浮かんでいたが、それと同時に彼の温かい掌が背中をじんわりと暖めて体に広がり、力んでいた力が抜け、彼女は無意識に小さく安堵していた。
それを見たとたん彼は背中から手を離すと、今度は頭に手を置いてくしゃくしゃと頭を撫でる。いつもの笑顔をみせると友達の方へ軽い足取りで向かって行った。
「心配性」
独り言を柴田の背中にぶつけたが、周りからの好奇な視線を少し感じ、そうそうに去って行った彼を恨めしく思いながらも、多少の落ち着きを取り戻した事に小さく感謝した。
「心配させてるのは私か……」
久我はまた独り言をこぼすと、しばらくはちゃんと朝から学校に行こう、と柴田が出て行った教室の扉を見ながら思っていた。
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