人形トンネル

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そのトンネルはな、人形峠って呼ばれてた山に開けたトンネルなんだ。 だから、人形トンネル。 まぁ、オレも爺ちゃんから聞いた話だから曖昧なんだけどさ、 その人形峠、昔はな、人形を供養するための場所だったらしいんだよ。 穴掘って、坊さんがお経あげて、人形を埋めてたらしいのね。 そこに掘ったトンネルだからさ、出てきたんだよ、いーっぱい。 ……何がって? そりゃお前、人形に決まってんじゃん。 トンネルを掘り進めていくごとにな、わらわらと、人形たちが山の土ン中から出てきたんだよ。 そりゃ、すげぇ数だったらしい。 ほとんどが日本人形だったんだけど、中には、あの、なんつーの?フランス人形みたいなヤツとかもあったらしいわ。 割と近代まで受け継がれてきた風習みたいだな。 その、人形の供養。 で、困ったのはトンネル掘る作業員。 最初のうちはな、人形を改めて供養してたんだと。 やっぱ、気味悪ィからな。 でもそのうち、間に合わなくなってきた。 なんせ、出てくる人形の数がハンパねぇ。 いちいち供養なんてしてたら、トンネル掘れねぇんだよ。 作業が進まねぇんだ。 だから、 そのうち、 人形の供養なんてしなくなった。 手足がちぎれてぼろっぼろになった人形たちをよ、キャンプファイヤーみたいにたき火をおこしてさ、そこにボンボン放り投げていくようになったんだ。 それからしばらくして、 事故は起きはじめた。
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