人形トンネル

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落盤やら、スリップやら、 あちこちで事故が起きはじめた。 岩の下敷きになって片手を潰されたり、 機械の誤作動で片足なくなっちまったり。 どんどん、作業員が減っていったんだ。 トンネルの中は、ケガした作業員たちの泣き叫ぶ悲鳴が響き渡ってたらしい。 最終的には、 現場の責任者が岩に潰されて、 ……首が取れた。 そりゃもう、捨てられちまった人形みたいにな。 で、急遽、人形の慰霊碑が建てられた。 その慰霊碑、今でもあるぜ? 写メ、送ってやろうか? へへ、遠慮すんなって。 え?今度連れてけ? バカ言え。 オレぁぜってー行かねぇぜ。 …近寄りたくもねぇ。 んでな、ようやく完成したんだ。 その、人形トンネル。 たった200メートル程度のトンネル掘るのに九年かかった。 途中、しばらく中断してたみたいだけどな。 やっと、できたわけだ。 でもよ、いまだに、 そのトンネルにまつわるいろんな噂が後を絶たねぇ。 夜、クルマでそのトンネルを通ったら、サイドミラーに血まみれの日本人形の顔が映る…。 とかな。 このトンネルの中で事故ったら、死にはしないけど片手が必ずちぎれる…、とかな。 トンネルの途中で振り返ると、人形にカラダの一部を持ってかれる…、とかな。 まぁ、いろいろだ。 ほら、よくいうだろ? 人形には魂がこもる、ってさ。 供養されなかった人形の怨念が、今でも、生きた人間のカラダを引き裂こうとしてトンネルん中に潜んでるんじゃねぇか、ってな。 で、今年の夏……、 ……やべ、思いだしたら鳥肌立ってきやがった……。
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