人形トンネル

あれは、いつだったかなー？

ちょうど、お盆過ぎ頃だったと思うけど。

その日、オレな、
トンネルの向こう側にある、ツレんちで夜中まで飲んでたんだ。

お前、覚えてる？
江崎に住んでた高橋。

え？覚えてない？

ま、しゃーねぇか。
あいつ、地味だったしな。
あだ名も地味メガネだったしな。

で、その日はもう、ソイツんちに泊まる予定だったんだよ。

でもな、
次の日の朝っぱらから用事が入ってたこと思いだして、オレは家に帰ることにしたんだ。

クルマ出そうにも二人とも酔っ払っちまってるし。

しゃーないから歩いて帰ることにしたワケよ。

まぁ、歩いたところで20分程度でつく距離だったしな。

酔い醒ましにゃちょうどいいやー、ってなもんよ。

で、オレは真夜中の海岸道路を一人てくてく歩いてたのな。

一応、国道なんだが、なんせ深夜１時過ぎのド田舎。
クルマなんて１台も走っちゃいねぇ。

オレはタバコ吸いながら、ちんたら歩いてたんだよ。

で、家に帰るにはいくつかトンネルを抜けなきゃなんねぇんだが、

あるトンネルに入った瞬間、

寒気がしたんだ。

涼しいなんてレベルじゃねぇ。
寒かったんだ。

言っとくが、真夏だぜ？

その時にな、
さっさと気づいてりゃよかったんだ。

気づいたのは、そのトンネルの中ほどに差し掛かった頃……。

そのトンネルがな、

人形トンネルだったんだよ。