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人形トンネルの噂は、ガキの頃からよく聞いてた。
実際、何回か通ったこともあるしな。
けど、噂に聞くような怖い目には遭ったことねぇし、
所詮、噂話は噂話だ、って思ってたんだよな。
……でも、でもな?
さすがに、こんな真夜中に一人で人形トンネルを歩いたことは一度もねぇ。
正直、後悔したよ。
引き返そうかとも思ったが、なんせもう半分以上歩いてたし、出口に向かったほうが明らかに早いって思ったんだ。
で、オレはひたすら歩いた。
薄暗い、
しーんと静まり返ったトンネルの中をな。
凍えそうな両腕をさすりながら。
ひたすら歩いたんだ。
んで、
ようやく出口が見えて、少しホッとした時にな、
聞こえてきたんだよ。
うっすらと、
遠くの方から。
なんつーのかな、
わらべ唄、ってヤツか?
あの、かごめかごめとか、はないちもんめとか、あんな感じの唄をな、子供たちが唄ってんだよ。
遠くの方で。
深夜1時だぜ?
ありえねぇんだよ。
最初は気のせいかとも思った。
恐怖で頭がイカレちまったのかと思った。
酒なんてとっくに抜けてたよ。
でも、段々とな、
その唄声が近づいてくるような気がし始めたんだ。
後ろからか、前から聞こえてきてんのか、
それさえわかんねぇ。
わかんねぇけど、オレぁ前に向かって歩くしかなかったんだ。
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