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そしたらな、
今度は後ろから、
…これは間違いなく後ろから、
足音が聞こえてきた。
ヒタ、ヒタ、ヒタ…、ってな。
裸足で歩いてるような音だ。
しかも、一人や二人じゃねぇ。
大勢の足音だよ。
ヒタ…、ヒタヒタヒタ、ヒタ…、ヒタ…ヒタヒタ、…ヒタヒタ、ヒタヒタ…ヒタ、ヒタヒタ……。
振り返ってみたかって?
バカかお前。
その状況で振り返れるわけねぇだろ。
オレは走り出そうとした。
でもな、足が重いんだ。
何かがしがみついてるみたいにさ、重くて走れねぇんだ。
普通に歩くことさえキツかったんだよ。
それでもオレは無我夢中で歩いた。
ひたすら歩いて、歩いて、歩いた。
わらべ唄と、足音に急かされるように。
ひたすら歩くしかなかったんだ。
……その頃になってな、
ようやくオレは、そのわらべ唄がどこから聞こえてきてるかに気づいたんだ。
それは前からでも、後ろからでもなくて、
下。
地面の底から、
聞こえてきてたんだよ。
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