桶狭間

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「ぬぅうぅんっ!」 信長の一振りで、一気に数十人の兵が薙ぎ払われる。 大軍は、信長一人を捉えきれない。 まさか誰も、たった一人で挑んでくるとは思いもしなかった。 しかも、こんな悪天候の夜中に。 あまりの大軍勢がゆえに、兵たちは身動きがとれずにいた。 が、それらの要因を差し引いても、信長は強かった。 「ええい! 囲え、囲えー!」 「だ、ダメだ! 近づいたらやられちまうー!」 信長の剣が、雨と共に兵を弾き飛ばしていく。 「ふっはははは!! 退けい! 我が覇道を妨げる輩は、皆、打ち砕いてくれようぞ!」 まるで悪鬼が如き戦いぶり。 しかし、愚かだ。 「たった一人で250万の兵を打ち砕けるものか。いずれヤツは力尽きるだろう。その時を待て」 今川義元の家臣、松井宗信は、遠くの信長を冷たい視線で見つめた。 尾張のうつけものとは言ったものだ。 これで織田家も終いだ。 「おらおらおらあぁぁっ!!」 信長は力の限り戦った。 己の全てを出し切り、戦った。 そして、その時はやってきた。
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