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マオがいないと九尾は静かだ。けど一定の距離をあけながらも、刺すような視線をずっと背中に向けられていては居心地が悪い。
「何よ。何か言いたいことでもあるの?」
「真由里。」
「何・・・・・・・え?」
今、『真由里』って言った?
ドキッとした。
そして目を見てすぐに分かった。
九尾は 気付いてる。
「それが本当の名前なんですのね。何が目的ですの?」
「・・・何のこと?」
「とぼけても無駄ですわ。
あなたは艶子じゃないでしょう。」
何か確信を持っているようで言い切った。
いや、確信も何も気付かないのがそもそもおかしいのだから、九尾の反応が普通なのかもしれない。
「確かに艶子に似ていますけれど、艶子のはずありませんわ。」
頭の中でぐるぐると言葉が浮かんでは消える。
『私は騙した訳じゃない。
気付かれたならそれが一番いい。
勝手に向こうが勘違いしただけ。
真実を伝えるのはあまりに不憫。』
考えがまとまらず、口だけがぱくぱくと動いた。
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