懐が深いのとバカは・・・あ、2回目だこれ

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「今度はこちらの質問に答えて頂きますわ。どのような目的で魔王様を謀っていらっしゃいますの?」 九尾を中心に空気が歪む。 一瞬目の前が砂嵐がかかったかのように掠れた。 「別に騙してるわけじゃ・・・かってに勘違いされただけで・・・」 「なら本物の艶子はどこに?」 歪んだ空気がこちらにまでおよび始めた。 軽い嘔吐感が迫り、手や背中がじっとりと湿る。 「・・・もういない。」 意識が朦朧とする。 先程と違って脳と口が直結していて、考える前に言葉が出た。 「私のせいで・・・もういない。」 涙が頬を伝う。 甦った自己嫌悪で疼くまりたいのに、視線すらぴくりとも動かない。 潤んだ視界に映ったのは、白目の部分が全て黒い瞳で埋まり、歯が獣らしく尖りはじめた九尾の姿だった。 「あなた・・・艶子に何をしましたの。」 怒りをあらわに爪を鋭く尖らせ、こちらに近付いてくる。 そうか、恋敵みたいなことを言っておきながら、九尾もおばあちゃんが好きだったのか。 九尾の手が振り上げられる。 それでもやはりぴくりとも動けない。 殺されると思った。 けれど、 それでも仕方ないんじゃないかと思ってしまった。
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