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「マオ、待たせてごめんね。帰ろっか。」
いつもでは考えられない言葉と笑顔でマオに駆け寄る。
案の定、マオは驚き固まった。
いつもは当たり前のように背中から抱き着いてくるのに、今日は様子を伺うように私の周りをひたすらうろうろしている。
確かに期待はしたけれど、まさかここまで効果があるとは思っていなかったから自分から仕掛けた割に驚いてしまう。
そして、ちょっと・・・楽しい。
「マオどうしたの?何かあった?」
これ以上にない優しげな笑顔を貼り付けてマオを見る。
マオはやっぱりおろおろと戸惑っている。
「艶子・・・。何かあったのか?」
「どうして?」
「・・・いや、別に・・・。」
歯切れ悪くそう言って、いつもの定位置にゆっくりと、反応をみるように背後から抱き着いた。
正直ちょっとイラッとしたけど、今日の私は怒らない。それどころか、にこやかに笑いかけた。
マオはそれ以降、微妙に体を緊張させたまま家に着くまで何も喋らなかった。
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