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木の葉同士の擦り合う音が辺りに響き、穏やかな風が真由里の黒髪をも小さく揺らした。
4月の風はまだ肌寒いが、雲ひとつない青空から届く日差しが心地好い。
遠くから響く騒いだ学生達の声すらBGMのように爽やかに聞こえた。
ここ『奥ノ森高校』の中庭は真由里のお気に入りの場所だ。
なぜならこの学校は彼女のような霊感の強い者に深い理解があり、敷地内を覆うように強い結界が張られているため、人外の者が校内に入ることはない。
そしてこの学校の中庭には、人の出入りが少ないわりに、生徒がそこで食事をとれるようにか、木製のテーブルが木々に囲まれるように丁寧に設置されているのもお気に入りの理由だ。
外では気を張りっぱなしの真由里もここでは心から落ち着けた。
・・・・はずが、今日は少し違う。
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