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「母さん?どうしてまた?」
「真由理がどれくらい艶子さんの若い頃と似てるのか気になっちゃって。」
「・・・、若い頃って幾つくらいのものがいいんだい?」
「やっぱり、今の真由理と同じくらいでお願いします。」
あっさり見せてくれると思っていたのに、お父さんは何故か渋い顔をした。
そして、言いづらそうに口を開く。
「・・・実は、母さんの若い頃の写真は一枚もないんだ。」
・・・え?
「一枚も?・・・全く?」
「僕も父さんから聞いた話だから詳しくは知らないけれど、母さんは両親を早くになくして、親戚の家を転々としていたらしいよ。あまり家族に恵まれなかったみたいだね・・・。」
そんなの初耳だ。
確かにおばあちゃんは自分のことを多く語らない人だったけど、辛かったことなんて一度も聞いたことがない。
「真由里と同じように小さい頃から幽霊なんかが見えていたから、周りからは奇異な行動をとる人に見られていたようだよ。
昔は理解してくれる人が周りにいなくて、人付き合いもあまり上手じゃなかったみたいだね。」
・・・意外すぎる。
私の中のおばあちゃんはいつも穏やかに笑って、品がよく、ひたすらに優しいイメージだ。
正に誰からも愛される人柄だろうに・・・
それともその過去があるからこその優しさだったんだろうか?
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