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「放っておいて。自分の体質が呪わしいだけだから。」
気分が底へ底へと沈んでいく。
おばあちゃんのことだって私が・・・
『お前は何も悪くない。だから胸を張りなさい。』
分かってるよ、おばあちゃん。
分かってるけど・・・
もう一度、同じことを言ってよ。
でないと、この言葉が現実なのか、私の願望なのか境目があやふやになる。
突然、ふわりと頭に体温を感じた。
マオが、まるで落ち着かせるかのように頭を撫でていた。
「昔のことを思い出しているのか?
・・・いい両親と友人に出会えたんだ。
過去に囚われるのはよくない。」
意外な言葉につい後ろにいるマオを仰ぎ見た。
やっぱりうっとおしい髪の毛に隠れて表情は分からない。
「何も悪いことはしていないんだ。その体質に関して、責任も負い目も何一つ感じる必要はない。胸を張るんだ。」
言葉遣いも声音も何もかも違うのにマオの声がおばあちゃんと重なった。
そしてそれがあまりにも優しげだから、不覚にも涙腺を刺激された。
慌てて顔を俯かせるけれど、きっとばれているに違いない。
「大丈夫だ・・・。お前は何も悪くない。」
何を根拠に言っているんだ、と思ったのに自分が急速に落ち着いていくのを自覚した。
マオから初めて、おばあちゃんの存在をはっきり感じた。
何も似ていないのにどこか似ている。その胸で小さい子供のように甘えたくなる。
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