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どれくらい経っただろう。
正確な時間は分からないけれど、決して短くはない時間、マオは穏やかに声をかけながら私の頭を撫で続けた。
胸中に渦巻いていた靄[もや]が今や跡形もなく霧散している。
あまりの心地良さに目を閉じると、意識がゆっくり、頭の上で動く手に集まっていった。
すると突然気付く。
その手の大きさに。
一瞬にして今の今まで重なっていたマオとおばあちゃんが切り離された。
それと同時に羞恥心がじわじわと背中をはい上がる。
せっかく穏やかだった胸中がけたたましく騒ぎ出す。
な、なんだこれ。なんだこれ!
「大丈夫だ・・・
『艶子』。」
・・・。
振り向きもせず、マオの顎に一発おみまいした。
私は『真由里』だ。
今さらなのに、なんだか急にムカついた。
「艶子、元気になったな!」
「突然殴られたことにもっと疑問を持てよ。」
線香花火の灯は大きくなる前に、落ちて消えた。
おばあちゃんとマオの関係は一つ分かったようでやっぱり分からず、謎だけが増えた。
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